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【難易度10】税の手続や相談のプロ、税理士の資格について

税理士資格について簡単に

税理士は国家資格であり、税理士となる資格がある者は税理士試験の合格者の他、税理士法に定められている者です。税理士になるには単に税理士試験に合格するだけではなく、日本税理士会連合会に備える税理士名簿に登録する必要があります。税理士は独占業務資格であり、税理士又は税理士法人以外は税理士業務を行う事は認められていません。税理士又は税理士法人以外の者が税理士業務を行った場合は、税理士法により罰せられます。税理士以外の者が副業やフリーランスなどで記帳代行を行っている場合は税務書類の作成など、税理士の独占業務に抵触していないかは気をつけましょう。

税理士試験は5科目からなり、会計2科目及び税法3科目のすべてに合格すると税理士試験合格者となります。税理士試験は科目合格制であり、合格した科目に有効期限がありません。そのため長期計画を立てて試験に臨むこともできます。

合格率について、必須科目である会計2科目は近年10%台後半~20%台に推移しているように見受けられます。税法3科目は10%台です。特に選択必須科目である所得税法と法人税法はどちらもほぼ10%台前半なので難関であることは間違いありません。

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ベルン
合格率は全体的に10%台が殆ど、かなり難関な試験だね

税理士の仕事について語ります

税理士は様々な仕事を行っています。税理士資格を生かした独占業務や資格の知名度を生かした様々な事業を営んでいます。

税理士の代表的な独占業務としてまず税務代理があります。税務代理とは、依頼人から委任状を受け、税務官公署に対して税法や行政不服審査法の規定に基づき申告、申請、請求、不服申立てなどの代理、代行を行います。税務調査の立会い重要な仕事です。

税理士の大きな独占業務の一つに税務書類の作成があります。確定申告書、相続税申告書、青色申告承認申請書など様々な書類を作成します。確定申告書には所得税・法人税・法人事業税・法人住民税・消費税・償却資産税・事業所税など様々あります。企業の経理の規模や熟練度によっては自社で税務書類の作成から申告まで行うことは難しいことが多いです。

税理士のもう一つの独占業務は税務相談です。ここでいう税務相談とは税務申告等に関して、租税の課税標準等の計算事項について相談を受けることです。節税のサポートや相続税の対策、税法の相談など相談内容は多岐に渡ります。

また株式会社で会計参与となることができるのは公認会計士(監査法人を含む)及び税理士(税理士法人を含む)のみです。会計参与は2006年5月に会社法で新たに導入された制度です。導入された背景に税効果会計、退職給付会計の導入など企業会計基準が複雑となってきたことが挙げられます。会計参与は取締役や監査役と同じく株式会社の役員であり、独立した立場を維持しつつ取締役と共同して計算関係書類を作成します。

税理士は各場所で税務の講師を行う方もいます。例えば法人会の決算法人説明会や会計購読誌・ソフト等運営会社主催の税務セミナー、顧問契約をしている不動産会社等で税務研修などがあります。また資格の専門学校で講師をする税理士もいます。

また税理士の資格の知名度を生かして経営コンサルタントを行う税理士もいます。但し経営コンサルに精通している税理士は数少なく、片手間に営業しているのが現状です。経営コンサルを依頼する際に会計事務所自体が経営計画書を作成し、PDCAサイクルを回せているかを確認してみるのもありでしょう。

ベルン
独占業務以外にも様々な仕事があるんだね

昔より緩和された、税理士試験の受験資格

税理士試験の受験資格について、必須科目である会計2科目と税法科目は受験資格が異なります。会計2科目は受験資格がなく、誰でも受験することができます。

税法科目については以下のいずれかの条件を満たすことにより受験することができます。

(学識による受験資格)

  • 大学、短期大学又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目(※)を1科目以上履修した者
  • 大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者
  • 一定以上の年限及び総授業時間を満たす専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
  • 司法試験合格者(但し、司法修習を修了した者であれば税理士試験を経ずに税理士となることができる)
  • 平成18年度以降の公認会計士試験の短答式試験の合格者

大学等で社会科学に属する科目を履修することが必須となります。一般教養科目で開講されている授業で履修しておくとよいでしょう。

(資格による受験資格)

どちらも簿記検定の最上位に位置する難関資格です。合格するにはかなりの勉強が必要となります。中卒又は高卒かつ下記の職歴が無い場合、これらの受験資格を得るためにこれらの検定の合格を目指すことになります。

(職歴による受験資格)

  • 法人又は個人事業の会計に関する事務に2年以上従事した者
  • 銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した者
  • 税理士・弁護士・公認会計士等の補助事務に2年以上従事した者

経理や銀行などでの貸付・運用業務、会計事務所などでの勤務実績が2年以上あれば受験資格が付与されます。

ベルン
大学などに行くなら学識による受験資格の獲得が簡単、一般教養科目などをよく確認しておこうね

税理士試験の科目免除とは

税理士試験には科目免除制度があります。一つは大学院にて修士若しくは博士の学位を授与されることによる免除です。もう一つは国税従事者等として永年勤続することによる免除です。

学位による科目免除は修士と博士とで大きく異なります。修士の学位を授与された場合は次の通りです。会計に関する研究を行い学位を授与された場合は、会計科目を1科目合格することにより残り1科目が免除されます。税法に関する研究を行い学位を授与された場合は、税法科目を1科目合格することにより残り2科目が免除されます。修士の学位による免除は、いずれかの科目を自力で合格することにより初めて科目免除が受けられます。博士の学位を授与された場合は次の通りです。会計系の研究を行い学位を授与された場合は、会計2科目が免除されます。税法系の研究を行い学位を授与された場合は、税法3科目が免除されます。研究した分野は試験が全て免除されるのです。

税理士試験は国税従事者等として永続勤務することにより科目免除されます。官公署で一定年数国税又は地方税に関する業務に従事することにより免除されるため、対象者で税理士に興味がある方は挑戦してみてもよいでしょう。尚、免除対象の業務及び必要な従事期間、免除される科目は下記の通りです。

(国税従事者等の科目免除要件)

    • 所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税若しくは酒税の賦課または法律立案に関する事務に従事した期間が通算して10年以上・・・税法科目のうち国税に関するものが免除
    • 上記を除く国税に関する事務に従事した期間が通算して15年以上・・・税法科目のうち国税に関するものが免除
    • 道府県民税(都民税を含む)、市町村民税(特別区民税及び森林環境税を含む)、事業税(特別法人事業税を含む)若しくは固定資産税(以下、道府県民税等)の賦課または法律の立案の事務に従事した期間が通算して10年以上・・・税法科目のうち地方税に関するものが免除
    • 道府県民税等の賦課または法律の立案の事務に従事した期間が通算して15年以上・・・税法科目が免除
    • 道府県民税等を除く地方税に関する事務に従事した期間が通算して15年以上・・・税法科目のうち地方税に関するものが免除
    • 道府県民税等を除く地方税に関する事務に従事した期間が通算して20年以上・・・税法科目が免除
    • 国税もしくは道府県民税等の賦課または法律の立案の事務に従事した期間が通算して23年以上・・・会計科目が免除
    • 道府県民税等を除く地方税に関する事務に従事した期間が通算して28年以上・・・会計科目が免除

国税専門官は勤務場所が税務署、国税庁、国税局となり、科目免除の要件を満たし易いと言えます。業務が国税に関することなので、実務の知識も身に付くことでしょう。税理士を目指して公務員となるのであれば、国税専門官を目指すのは一つの手です。
地方公務員も条件を満たせば税理士試験の科目免除の対象となります。地方税の賦課や法律の立案に関わる事務の実務経験が通算10年若しくは15年以上必要となります。税理士試験の地方税に関する科目が免除され、税法科目は選択必須科目である所得税法または法人税法を受験するだけとなります。また15年もしくは20年以上の実務経験がある方は税法科目が全て免除されます。

23年または28年の実務経験がある方は税理士試験が全科目免除され、税理士として登録することができます。

税理士試験について語ります

税理士試験は5科目に合格することによって税理士試験の合格者となります。5科目の試験を受けて税理士試験に合格することを「官報合格」、一部もしくは全科目を免除されて税理士試験に合格することを「認定合格」といいます。官報合格を目指すことは社会人でも働きながら勉強ができるため受験はし易いのですが、試験の難易度が極めて高いため学位による科目免除を目指して大学院へ入学する方もいます。

試験は必須科目である会計2科目である「簿記論」「財務諸表論」、税法3科目のうち選択必須科目である「所得税法」または「法人税法」、残りの税法を「相続税法」「消費税法又は酒税法」「国税徴収法」「住民税又は事業税」「固定資産税」から2科目選択します。

合格点は各科目60点です。公式にはすべての配点が公表されておりませんが、傾斜配点がなされていると言われています。合格率が一定の範囲となるように調整され事実上の競争試験であると考えて下さい。

「簿記論」は日商簿記検定1級と90%程度出題範囲が重なります。ほぼ計算問題であるため、知識と解法を身につけスピーディに問題を解く練習をしておきましょう。受験生がほぼ解けない問題も出題されるため、見極めできる能力も身につけておきましょう。時間内に全てを解き切ることは困難です。得点すべき箇所は失点しないようにしましょう。

「財務諸表論」は企業会計原則や企業会計基準、会社計算規則その他の規則などから出題されます。計算問題及び理論問題が出題され、理論問題は論述式問題が含まれます。理解している内容をきちんと表現する必要があります。

「所得税法」「法人税法」は税理士試験合格後のキャリアを考慮して選択すると良いでしょう。受験者数でみると法人税法の方が多いのです。例えば企業の法人税の計算では法人税法の知識が役に立ちます。個人の所得税計算の案件を受けた際には所得税法の知識が役立ちます。

その他の税法2科目は実務で使用する科目を選択すると良いでしょう。または合格しやすい科目を選択するのも1つの手です。





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