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【難易度8】原子炉の保安監督を行う資格、原子炉主任技術者

2024-06-01

業務独占資格である原子炉主任技術者について

原子炉主任技術者は、原子炉の運転に関する保安監督を行う技術者を認定する国家資格です。この資格は業務独占資格であり、原子炉設置者は保安監督を行うために原子炉主任技術者を選任することが義務付けられています。原子力規制委員会が主管する資格であり、当該委員会は核燃料取扱主任者及び放射線取扱主任者なども主管しています。

原子力主任技術者試験は筆記試験(一次)及び口答試験(二次)からなり、合格率は近年のみに着目すると筆記試験は10%~15%、口答試験は20~30%程度です。認定課程を修了した者は筆記試験の特定科目の免除が行われ、科目免除者の合格率は近年ほぼ100%で推移しています。

原子炉主任技術者試験に臨むに当たって一番の壁は参考書が殆ど無いことです。対策としては原子力に関連する専門書を参照する、原子力規制委員会のホームページにある過去問を勉強するなどできることはあります。実務経験などで身につけた知識も生かすことができるでしょう。

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ベルン
参考書が殆どないのは大変かも、何らかの対策をする必要があるよね

原子力発電などについての説明

原子力発電は二酸化炭素を排出することなく大量の電力を供給することができ、また使用済の燃料を再処理することでリユースすることができます。この発電はエネルギー資源小国である日本にとって重要なエネルギー源の1つです。

原子は原子核と電子からできています。原子核が2つ以上に分裂する現象を核分裂といいます。核分裂は様々な物質で起こりますが起こりやすい物質に「ウラン」があります。核分裂を起こしやすい「ウラン235」と核分裂を起こしにくい同位体「ウラン238」があり、原子力発電ではウラン235の含有量を3~5%に高めたものを燃料として使用されます。ウラン235の原子核に中性子を当てて連続して核分裂を発生させ、熱エネルギーを発生させます。原子力発電はこのような工程で行われます。

原子炉には下記のような種類のものがあります。

(原子炉の種類)

・沸騰水型軽水炉(BWR)

原子炉内の水を沸騰させて蒸気をつくり,その蒸気でタービンを回す原子炉

・改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)

BWR(沸騰水型軽水炉)の改良型

・加圧水型軽水炉(PWR)

原子炉内でつくられた高温高圧の水を蒸気発生器に送って原子炉内の水とは別の水を蒸気に変え,その蒸気でタービンを回す原子炉

・重水炉

減速材として重水を使用する原子炉

・黒鉛炉

減速材として黒鉛を使用する原子炉

・高速増殖炉(FBR)

原子炉内で生まれるプルトニウムを主な燃料として,冷却材にナトリウムを使う原子炉

・新型転換炉(ATR)

減速材として黒鉛を使用する原子炉

原子炉にはこのように様々な種類があります。日本で使用されているのは軽水炉のみです。

また原子炉の取扱う際には事故を起こさないようにしなければなりません。事故により放射線が放出されると被害が多大になってしまうことも起こりうるのです。
放射線は光の一種です。放射線を出す能力を放射能、放射線を出す物質を放射性物質といいます。放射性物質は時間の経過とともに放射線を放出しない安定した物質へ変化します。

放射線には放射能に注目した単位「ベクレル」と人体への影響の大きさを表す単位「シーベルト」があります。私達は放射線を浴びることにより染色体内のDNAがダメージを受けます。基本的に人体は損傷を修復する機能を備えており、少量であれば殆ど修復されますが大量の放射線を浴びると十分に修復できなくなります。

ポイント

  • 原子力発電は核分裂を発生させて発電させている
  • ウラン235とウラン238は同位体だが核分裂を起こしやすいのはウラン235
  • 日本にある原子炉は軽水炉のみ
  • 放射能は少量を浴びてもダメージは少ないが多量を浴びるとダメージを修復できない
ベルン
ウラン235に中性子を当てて核分裂をさせるんだね

原子炉主任技術者の仕事について

原子炉主任技術者は上記で述べた通り、原子炉の運転において保安監督を行う資格です。業務内容は運転計画の立案、原子炉の監視・点検・保守、安全確保のための技術的指示、緊急時対応などを行います。

原子炉主任技術者の勤務先は電力会社、エネルギー企業、電気機器企業、研究機関などです。様々な原子炉を有する企業で活躍しています。

原子炉は事故の発生を起こすことは許されません。そのため慎重さが求められる仕事です。電気を安定して供給する必要も当然必要となります。

ベルン
事故は許されず電気の安定した供給も必要、大事な仕事だね

原子炉主任技術者試験について

原子炉主任技術者試験は筆記試験(一次)及び口答試験からなります。受験資格は筆記試験は誰でも受験することができます。口答試験は下記の通りです。

(口答試験の受験資格)

※1、2の両方の条件を満たすこと

1.筆記試験(一次)に合格すること

2.原子炉の運転に関する業務に 6 か月以上従事 又は 指定講習機関等において原子炉の運転に関する課程を修了

筆記試験は6科目からなり、1科目2時間30分の試験となります。科目は下記の通りです。

(筆記試験の科目)

・原子炉に関する法令

原子力基本法や原子炉等規制法、保安規定その他さまざまな法令、規則などに関連する問題が出題されます。

・原子炉理論

原子核の断面積、中性子束に関する計算問題その他計算問題や説明を行う問題が出題されます。

・原子炉の設計

熱交換器内の単管の熱量を計算する問題、計算式を証明する問題などが出題されます。

・原子炉の運転制御

用語の説明問題、PWRやBWRに関係する説明などが出題されます。

・原子炉燃料及び原子炉材料

二酸化ウランの製造過程、化学式や融点、機構の説明の問題などが出題されます。

・放射線測定及び放射線障害の防止

用語の説明問題、被ばくによる影響、放射能濃度の計測が出題されます。

原子炉主任技術者試験は筆記試験の一部科目免除制度があります。認定課程(原子力規制委員会が適当と認めた大学院の専門職学位課程)を卒業した者は「原子炉に関する法令」以外の科目が免除されます。

口答試験は、原子力に関係する一般的な知識及び原子炉主任技術者としての適性や資質があるかが問われます。

上記で記載した通り参考書が極めて少ない資格試験です。専門書や過去問などを頼りに試験対策を行いましょう。


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