日商簿記検定1級はどのような資格か
日商簿記検定1級は簿記検定の最高峰の資格であり、極めて難易度が高い資格です。日商簿記検定2級までは保持者が多いですが、日商簿記1級の保持者は少ないです。同等の資格に全経簿記検定上級という資格がありますが、日商簿記検定1級のほうが難しいと言われています。
日商簿記検定1級の資格を持っていると会計や簿記に関して専門的な知識があると見なされ、就職や転職の際にかなり有利になります。他者と同じくらいの実力であれば、優先的に採用される可能性が高いことは否めません。また文系学部で営業職を望まない方が日商簿記1級を取得しておくと、就職活動の際に職種別採用などで経理職で内定を得やすいです。2級までは取得している人が多いので、1級を保持しているとかなりのアドバンテージであることは言うまでもありません。他の多少の欠点を補うことができる面でも効果抜群でしょう。
日商簿記検定1級は、全経簿記検定上級と同じく取得すると税理士の税法に関する科目の受験資格が得られます。一定の学歴や職歴等がない場合は日商簿記1級または全経簿記上級に合格する必要があります。
日商簿記検定1級はなぜ難しいのか
日商簿記検定は上記で述べた通り難易度が高い試験です。なぜ難しいのか。まず第一に、2級まで出題された商業簿記、工業簿記に加えて会計学、原価計算が加わることが挙げられます。会計学では2級までで馴染みのなかった企業会計原則や企業会計基準を学習します。これは暗記ではなく、よくテキストを読み込み考え方を理解することが大切になります。原価計算はCVP分析や意思決定会計の問題などが出題されます。意思決定会計は新しい論点です。経営者目線の考え方ですので、学習内容は人によっては面白く感じるしれません。
第二に、試験時間が短いことです。商業簿記・会計学が90分、工業簿記・原価計算が90分となっており、時間配分を間違えると一部の科目がほとんど回答できずに試験終了となってしまいます。もし時間内に解き切ることができなければ、次の科目に切り替える事も重要です。
第三に、一定点数以下の科目があると総合得点が合格点に達していても不合格となることです。具体的には総合70点以上で合格となっておりますが、10点未満の科目があると不合格となります。そのため、苦手科目を作ることが許されません。万遍なく勉強をすることが求められます。
最後に、傾斜配点があることです。日商簿記2級までは合格者の人数にかかわらず基本的に傾斜配点は行われません。合格点に達していれば合格と考えてよいのです。1級は合格率が10%前後になるように調整されます。合格したと思っても傾斜配点によって不合格となることもあるのです。考え方を変えると試験の上位10%に達してなければ合格することはできないのです。日商簿記検定1級は競争試験と考えてもよいでしょう。
日商簿記検定1級の試験科目について
日商簿記検定1級は上記で述べた通り商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算の4科目からなります。内容は下記のようになっています。
商業簿記は、日商簿記1級では2級で出題されなかった論点が出題されます。売価還元法、減損会計や退職給付債務の計算など難易度の高い論点が追加となります。売価還元法はボックス図を書いて解く、減損会計はどういったときに計上するかの判定を理解するなど解法と理解をどちらも身に付けていく必要があります。出題パターンは回によって異なりますが、決算整理前残高試算表および決算整理事項の資料があり、それを元に貸借対照表および損益計算書を作成する問題などが出題されます。決算整理事項の内容によっては仕訳を書かずに図やテーブルを書き計算した方が早いものもありますので、試験勉強で解法を身に付けましょう。
会計学は、日商簿記1級で初めて出題される科目です。企業会計原則や企業会計基準から理論問題が出題されますので学習する必要があります。学習方法は条文を一字一句丸暗記するのではなく、理屈を理解することが大切です。特に税理士や公認会計士などの上位の試験の受験を考えている場合は、理屈が分っていないとそれらの試験にはほとんど太刀打ちできません。会計学の出題は半分が理論問題、残り半分が特定の会計基準に従った計算問題が出題されます。理論は択一問題及び穴埋め問題です。計算問題は会計基準を知らなければ手が出せませんが、知って入れば簡単な問題が殆どです。勉強をしていれば高得点を取りやすいでしょう。
工業簿記は日商簿記2級で学習した内容よりも高度な内容が出題されます。個別原価計算、総合原価計算、実際原価計算、標準原価計算など基本は同じですが、細かな論点が出題され計算は極めて複雑になります。事前の勉強量が得点に直接結びつきます。インプットも疎かにはできませんがアウトプットに重きを置いて計算慣れをする必要があります。
原価計算は「原価計算基準」の穴埋め問題や直接原価計算及びCVP分析、意思決定会計などの問題が出題されます。意思決定会計などは経営者視点から見た判断を提供するための会計ですが、人によっては面白く感じる分野です。ここの論点は項目ごとに独立しているため、勉強もしやすいです。勉強量にもよりますが原価計算は工業簿記よりも得点しやすい分野です。