貸金業務取扱主任者が国家資格化した背景にあった貸金業法改正
2006年に貸金業法が改正され、段階的に施行後、2010年6月に完全施行されました。改正の背景にあった一番の問題は多重債務問題です。その原因としてあげられるものは、高金利や過剰な貸付により元金が返済できない問題や金利負担を意識させない返済システムの問題などが一端に挙げられます。
多重債務問題を含む様々な問題に対応するために、貸金業法が改正されました。貸金業者に対しては、貸金業の登録要件の強化がなされました。その内容は営業に必要とする純資産額を5000万円へ引上げ、登録拒否事由の追加、貸金業として登録されている会社の営業所では、貸金業に従事する従業員50人当たり1人貸金業務取扱主任者が必置義務化されました。
貸金業務取扱主任者の必置義務化の流れにより、民間資格であった当資格が国家資格化されました。必然の流れであると言えます。
有資格者の必置義務や更新制度などの貸金業務取扱主任者についての概要
貸金業務取扱主任者は消費者法に基づいた資格です。2010年の貸金業法改正の第3条施行(2011年6月18日)から国家資格となりました。貸金業務取扱主任者は消費者金融やクレジット会社、その他貸金業を行う業者が、法律や法令等を遵守して業務を適正に行うために助言や指導をします。また貸金業者は、貸金業務取扱主任者が適切に助言や指導を行う事ができるようにしなければならないと法で定められているのです。この事は、自社の信頼を損ねないためにも必要不可欠なのです。
貸金業として登録されている会社の営業所では、貸金業に従事する従業員50人当たりに1人の割合で貸金業務取扱主任者の必置義務があります。そのため、貸金業者では貸金業務取扱主任者は社内で重宝されます。貸金業界では昇進の要件になっていたり、資格手当の支給対象となっていることもあるため、取得する価値は大いにあります。必置資格のため、保持しているだけで宅建や衛生管理者と同じ役割を果たすことができます。
試験に合格後、登録申請を行い登録を受けることで貸金業務取扱主任者となります。貸金業務取扱主任者の資格は更新制となっており、3年毎に更新する必要があります。更新しないと新たに更新手続きをするまでの間、資格の効力が抹消されます。その間有資格者の人数が満たしていないと貸金業を営業できないため、貸金業に勤務している有資格者は特に注意する必要があります。尚、試験合格の効力は永久に有効です。
消費者金融やクレジットカーかド会社など様々な貸金業者
かつてはダークなイメージがあった消費者金融
消費者金融は個人に対して融資を行う金融機関です。以前、出資法の上限金利は29.2%でした。一方、利息制限法の上限金利は借入額によって15%~20%となっています。この利息制限法の上限金利を超えて出資法の上限金利以下の金利をグレーゾーン金利といいます。この金利での貸付は刑事罰を科されることもありません。消費者金融の大半はこの金利で貸し付けていました。しかし、この金利は無効であると最高裁判所で判決が下されました。そのため、グレーゾーン金利はこの最高裁判決をうけて、2010の出資法及び貸金業法改正により廃止されました。このグレーゾーン金利について還付金請求が多くの件数なされました。
総量規制などもなされ、以前のような過剰な貸付がシステム上できなくなりました。利息制限法の遵守や総量規制などによりかつての「サラ金」「高利貸し」といった暗いイメージは払拭されつつあります。
3つの種類がある、クレジットカード会社について
クレジットカード会社には3つの種類があります。それは国際ブランド、クレジットカード発行会社、加盟店管理会社です。それぞれ説明します。
・国際ブランド
国際ブランドにはVISA、JCB、American Express、MasterCard、Diners Clubの五大ブランドを含む様々なブランドがあります。これらの企業は世界中で通用する決済機能をクレジットカード発行会社へ提供します。
・クレジットカード発行会社
クレジットカード発行会社は様々な業務を行います。クレジットカードの発行がメインの業務ですが、入会審査や会員管理、ポイントや特典の付与、傷害保険を含むその他各種保険の手配などを行います。
三井住友カードや楽天カード、セゾンカードを取扱う会社が様々なあります。
・加盟店管理会社加盟店管理会社は業界内でアクワイアラと言われ、「取得者、入手者」などの意味があります。事業の内容はクレジットカード加盟店の新規開拓や審査、既存加盟店の管理、加盟店がクレジットカードでの売上があった際の立替入金を行います。また売上があった際にクレジットカード発行会社へ代金請求を行います。
建設会社や不動産会社などについて
不動産会社や建設会社は不動産仲介や分譲住宅、新築住宅の販売などを業としています。不動産や住宅などの商品は販売金額が高額であり、現金一括で購入する顧客は稀です。そのため多くの購入者は住宅ローンを利用するのですが、基本的に住宅ローンの実行のタイミングは物件の引き渡し時なのです。理由は引渡し後でないと物件に抵当権を設定できないためです。そのため顧客は引渡し前に物件購入に必要な資金がある際に「つなぎ融資」を受け、ローン実行時にそれを返済します。
他にも貸金業者に該当する事業者は多数あります。尚、銀行や信用金庫などは貸金業者に含まれません。
難関ではないが合格率は低め、貸金業務取扱主任者試験
貸金業務取扱主任者試験は受験資格が無く誰でも受験することができます。試験問題は50問、四肢択一形式、試験時間は2時間となっています。難易度は決して難関ではないですが、合格率は例年30%程度に推移しており易しい試験とも言えません。そのため油断はできない試験なのです。
出題科目は4科目からなり、下記の通りです。
1.法及び関係法令に関すること
・貸金業法
・出資法
・利息制限法
・監督指針
・事務ガイドライン
・自主規制基本規則
・紛争解決等業務に関する規則
・貸付自粛対応に関する規則
・その他
2.貸付け及び貸付けに付随する取引に関する法令及び実務に関すること
・民事法
・民事手続法
・倒産法
・刑事法
3.資金需要者等の保護に関すること
・個人情報保護法
・消費者保護法
・経済法
・貸金業法その他関係法令
4.財務及び会計に関すること
・家計診断
・財務会計